【今回の本】
『あきない正傳 金と銀』全13巻 (2016~2022)
高田郁 著 角川春樹事務所
皆さんは時代小説って読みますか?
私は正直、これまでほとんど読むことがなかったのですが、一昨年SNSの情報から『あきない世傳 金と銀』という時代小説に出会いました。
タイトル「あきない」ですから「商売」の話というのはわかります。どうやら江戸時代の呉服屋さんの話なんですね。
学生にも人気と言うことに驚きと興味を持って、最初は図書館で借りました。そしたらどハマり❣️結局1巻から13巻まで大人買いしましたが、全巻買って悔いのないシリーズです。
◆ハマるポイント1:「商とは詐り」か?テンポの良い展開で物語に引き込まれる
江戸中期。主人公は七歳の少女「幸」。学者の家に生まれて、七夕の短冊に漢字で「知恵」と書きますが、母親に「女子に学はいらん」と叱られるエピソードからお話が始まります。
学者のお父さんは、商売人をものすごく嫌っていて、あるときこう言います。
「自ら何も生み出さず、右から左へ動かすだけで金銀を得るような、そんな腐った生き方をするのが商人だ。商とはすなわち詐りなのだ。」
でも賢いお兄さんは二人きりの時に幸に言うんですね。
「今後はモノの売り買い、金銀を抜きに語れない時代が来る。…士農工商と言うけれど、商を貶(おとし)めて良いものではないだろうに」
この後大飢饉が起こり、兄が亡くなります。後継者を亡くした父も職を失って、幸は大阪の呉服屋さんに奉公に出ることになります。ここまでが一巻の4分の1。
ここから「商売って何だろう」という幸の探究と奮闘のドラマが始まります。
◆ハマるポイント2:現代に通じる商売のノウハウが詰まっている
- 呉服の営業は、コーディネートの提案。
- 新しい生地を作るのに、絹糸の製造をしている村に出向いて融資したり、商品開発。借金を背負わせて自分の言いなりにさせようだなんて、不良手形を渡した不誠実さで取引中止になったり、失敗談も。
- 金融知識なども得られて面白い。江戸時代に流通する貨幣が3種類あったこと。江戸は金、大阪は銀、少額の支払いは銭。現代の銀行に繋がる「両替商の役割」など知識も得られる。
- 江戸進出後は、帯の結び方講座、裁縫のお手伝いなど、ニーズに応えて人気店に。
- 染め物職人との信頼づくり、柄デザイン、江戸の流行を生み出していく。
「買うての幸い、売っての幸せ」を追求していく、まっすぐなビジネスドラマ。
◆ハマるポイント3:逆風に立ち向かい続ける人間ドラマ
それぞれ懸命に生きているけど、伝わらない思い、こじれてゆく人間関係も見どころ。主人公・幸は家庭運がない。
特に、妹の「結」が後半に大きな存在感を放ちます。守ってやりたかった姉の思いとは裏腹に、結は出来の良い姉への嫉妬心やコンプレックスで、モンスターになってしまうんですね。胸が痛い。切ない😢
13巻のラストで、タイトルの「金と銀」に込められた伏線回収。「幸は一人ではなかった」って思えて涙が出ました。
全巻あっという間のシリーズです。第1巻となる「源流編」だけでも読んで見てください。
◆関連リンク(画像クリック)
2024年1月8日に参加した「お金の本ビブリオバトル」でこの『あきない正傳』を紹介させていただいたのですが…
ちょうどNHKのBS時代劇で去年12月から放送されていたではないですか!
何も知らないモグリな私😓
#あきない正傳 #金と銀 #高田郁 著 #角川春樹事務所